社内の大量のファイルや文書を統合的に管理するECM(Enterprize Content Management:エンタープライズコンテンツ管理)

ECMとは何か?」「ECMはオンラインストレージとどう違うのか?」「オンラインストレージからECMに切り替えることでどんなメリットがあるのか?」と思われている人は多いかもしれません。

ECMとオンラインストレージは似ているようで、その特徴やメリットは全く異なります。

今回は、これからECMを活用したいと思っている企業に向けて、両者の違いやECM導入のメリットについて解説します。

ECMEnterprise Content Management)とは?


ECM
とは、企業が保有するファイルや文書などの「コンテンツ」を統合的に管理するという意味で、日本では「エンタープライズコンテンツ管理」とも呼ばれています。電子文書を格納や管理する文書管理と混同されがちですが、文書管理はECMの一部であり、一般的にECMとは文書のみならず企業の管理するあらゆるデータを管理することを指します。

図)企業内の全てのコンテンツの「利用」と「管理」の両方を実現するECM


ECM
を活用することで、従来管理対象であったデータベースなどにある数値化・記号化された「構造化データ」のみならず、WordExcelなどのビジネス文書やメール、画像、動画、音声などの「非構造化データ」、それら全ての情報を、既存の業務と関連して管理することができるため、各部署やグローバル含めた各拠点が保有する全ての情報管理やコントロールが可能となります。
※構造化データと非構造化データの詳細については、「構造化データと非構造化データとは?データ活用に必要なビッグデータ管理の課題」の記事も参照ください。


更に、ファイルや文書の管理において、全ての企業によって最重要課題の一つであるセキュリティコンプライアンスへの対策として、標準的なECM製品にある機能としてコンテンツごとに細かなアクセス権限や監査ログ機能があります。これらを設定することで、データ改ざんや情報漏えいの事故を未然に防ぐことが可能です。

そのため、ECMは「データガバナンス」が求められている企業にとって非常に役立つデータ管理システムといえるでしょう。


商品のIoT化や社内データの有効活用が浸透しているため、「ビッグデータ」を大量に扱う企業が増えています。また、グローバル化によって遠く離れた拠点ともデータをスムーズに連携することが必須になりつつあります。更に、企業が取り扱う電子帳票やWebコンテンツなどの情報量も激増しています。これらの背景から、データの有効活用や業務の効率化、データの個別管理ではなく「一元管理」が求められ、ECMを利用している企業が増えてきているのです。


企業内のコンテンツを安全に守りながらも集めた情報を有効活用し、グローバル化されていく社会の中で勝ち続けて行くために、ECMは非常に重要な基盤となるでしょう。そのため、今後ECMを活用し始める企業はますます増えていくことが予想されます。

オンラインストレージとの違い


ECMがコンテンツの管理システムなら、オンラインストレージとどう違うのか?」と感じる人もいるかもしれません。


オンラインストレージ(またはクラウドストレージやファイル・ホスティング)とは、一言で言うと、ユーザー毎に貸し出したサーバー上のスペースにアップロードしたファイルを、インターネット上で共有できるサービスになります。

オンラインストレージは、社内のファイルの保存先やバックアップ先として利用されることが多く、ファイルを保存・共有することが主な用途といえます。


ファイルを保存・共有することにメインを置いているので、ファイルの同期スピードが速いなどのメリットはあるものの、細かなセキュリティ設定やユーザー閲覧権限の管理、SAPOracleなどのERPシステムとの連携、業務プロセスと関連したファイルの紐づけなどの「管理面」はまだまだ弱いといえるでしょう。また、基本的にはフォルダ階層によるファイル管理となるので、大量にデータが増えてくると、保存したコンテンツが探しにくいという特徴もあります。


一方、ECMはファイルを保存・共有するために使うだけでなく、ファイル単位で、既存のERPシステムや業務プロセスと密接な「関連性」を持たせ、細かな「検索機能」を設けることで、更なる「業務の効率化」「データの有効活用」を促すためのシステムです。

ファイル単位に自由に付与可能な「メタ情報」を活用した「柔軟な検索性」、ファイルごとのダウンロードや印刷の制御、文書内の墨消しなどの細かなセキュリティ設定、個人・組織単位での細かな閲覧権限や監査ログの管理を可能とし、社内コンテンツを安全にかつ効率的に管理します。


また、生成した文書のレビュー・承認などの「ワークフロー」の実装、業務プロセスに応じたファイル一覧管理やプロジェクト成果物などの「業務の標準化」を目的としたテンプレート機能、従業員一人一人に応じたダッシュボード画面の設定、ファイルのアーカイブや廃棄・移行を自動化する機能なども備えられています。

つまり、ファイルや文書の保存・共有よりも「管理・活用」することに特化しているので、企業内のデータを安全に守りつつ、業務の効率化やデータの有効活用に利用できる点が大きな違いといえるでしょう。

ECM活用のビジネスメリットは?


ECM
を実際に利用することでどういったビジネスメリットがあるのかをいくつかご紹介します。

昨今、大企業によるデータの改ざんや情報漏えいなどのニュースが世間を騒がしていますが、ECMの導入により、社内のセキュリティやガバナンス・コンプライアンス面の改善や強化ができることは大きなビジネスメリットの一つです。

保管しているデータそれぞれにアクセス権や閲覧権限を設定することができるので、機密情報の改ざんや外部への持ち出しを未然に防ぐことができます。また、監査ログでアクセス履歴を残すことができるので、誰がいつどのようなコンテンツを見たのか?変更・削除したのか?が容易に把握できます。

また、セキュリティがしっかりしているので、セキュリティ面が弱いオンラインストレージでは保管することができなかった分散されたデータも、ECMを利用すれば他のデータと同じシステムで一元管理することができるため、全社のファイル管理のシステムコストを抑えることもメリットの一つでしょう。


次に、ECMは既存の業務プロセスと密接なファイル管理や効率的な検索を可能とするため、どのファイルがどこにあるのか?どのファイルが最新なのか?などの日々の無駄な作業時間から解放され、業務の効率化を生み出し、業務コストの削減や売上の改善が期待できるというビジネスメリットがあります。

例えば、フランチャイズチェーンで新店舗をオープンさせるとき、オープン予定の立地と似たような既存店舗のデータを参考に日商や集客、客層を予測します。しかし、参考になるデータを所有していたとしてもそれを素早く探したり、活用できなければ、データを基に人員や設備面など運営における対策に必要以上に時間がとられ、業務コストがかさむでしょう。

また、これまで蓄積したビッグデータの有効活用はライバル社と売上を争うときに貴重な武器となり得ますが、良い武器を持っていても使いこなせなければ競争に負けてしまいます。ビッグデータに素早く簡単にアクセスし分析スピードをあげることで、売上の改善も見込めるのです。


他にも、企業内の全ての情報を一元管理するECMは、部署や拠点の壁を乗り越えて、従業員が知りたい情報を得ることができ、個人が持つ知識やスキルを、特定の範囲だけでなく企業内全体で共有できるため、従業員のスキルアップや企業内の価値観の多様化が推進され、企業内活動の質が向上するというメリットもあります。

図)ECMは部門間での情報・知識共有を促進

 

まとめ


いかがでしたでしょうか。デジタルトランスフォーメーションやグローバル化によって、企業が保有するビッグデータがますます拡大していくなか、既存のコンテンツをセキュアに守りながらもビジネスの拡大に向けて新しいコンテンツを素早く生成し有効活用させていくことは大変です。

まずは、その基盤づくりとしてECMを導入することから始めてみるのをお勧めします。