顧客の好みが多様化する中、今や多くの企業がOne to Oneマーケティングにより、顧客の獲得に努めています。

顧客一人ひとりの趣味嗜好や関心に合わせたコンテンツを配信するため、企業は非常に多くのデジタルアセット (各種コンテンツに含まれる画像や動画、ロゴなどのIP資産) を管理しており、その手間は日々、増大しています。

それらのデジタルアセットを管理するために注目が集まっているのが「DAM(デジタル資産管理)」です。

本記事ではクリエイティブ業務をさらに効率的にするため、DAMが提供する主な機能、AIとの連携により可能になることなどについて解説します。

DAMとは?

DAM (デジタル資産管理)とは、企業の中にあるテキスト、画像、動画、カタログデータ、アニメーションなどのデジタルアセットを、「一元的に管理」するための仕組みです。

そしてその仕組みをソフトウェア化したものがDAMシステムです。DAMシステムは企業にあるすべてのデジタルアセットの収集から管理、検索、活用、配信までワンストップで提供します。

DAMが注目されている背景には、顧客の嗜好の多様化により、One to One to Oneマーケティングが欠かせなくなったことが挙げられます。

そしてSNSなどの発展により、顧客一人ひとりの情報が大量に手に入るようにもなりました。一人ひとりのニーズに合わせて、パーソナライズしたコンテンツを提供するため、クリエイティブ業務の担当者は膨大な量のデジタル素材を扱うことになります。しかもそれらのデジタル素材が社内でバラバラに管理されていることも多く、活用時に捜索するなど、手間がかかっていたのです。

注目される理由はそれだけではありません。「著作権侵害を未然に防ぐ?!クリエイティブ業界における情報ガバナンス基盤の重要性」という記事でも紹介したように、著作権の適切な管理やブランドの一貫性の担保など、情報ガバナンス上の課題を解決する手段として、DAMに注目が集まっているのです。

DAMの主要機能と活用するメリットについて

DAMが提供する主な機能について説明しましょう。先述したようにDAMはコンテンツのすべてのライフサイクル「収集」「管理(オーガナイズ)」「検索」「活用」「配信」までを管理し、デジタル資産の有効活用を可能にするための機能を提供しています。

  • 収集:企業内に散在する全てのデジタルアセットを収集し、一括アップロードします。動画などの大容量コンテンツについては、業務に支障がでないよう、高速にアップロードするような機能を提供します。
  • 管理 (オーガナイズ):必要なコンテンツを容易に見つけられるような、柔軟なメタデータ管理を可能にします。また担当部門のコンテンツのセキュリティを担保するためのアクセスコントロール機能などを提供します。
  • 検索:キーワード検索だけではなく、カテゴリや登録ユーザーによる分類をすることで、絞り込みが容易にできるような機能を提供します。
  • 活用:検索で見つけたコンテンツを利用目的に合わせてフォーマットやサイズ変換を自動で行うなど、コンテンツを最大限有効活用するための機能を提供します。
  • 配信:DAMシステムで管理されたアセットの関係者への配信のほか、SNSWebサイトなど様々なチャネルに必要なフォーマットで自動配信するなど、デジタルコンテンツのサプライチェーンを自動化する機能などを提供します。

 

DAMによるデジタルアセットのライフサイクル管理

図. DAMによるデジタルアセットのライフサイクル管理


管理するデジタルアセットとは、画像やビデオ、テキスト、イラスト、音声ファイルのほか、カタログコンテンツ、映像コンテンツ、Webコンテンツなどのデータです。

またコンテンツの配信に即したデジタルアセットの配布プロセスも自動化されるなど、デジタル資産のDAMの活用により、グローバルな組織でもデジタルアセットは一括かつ効率的に管理されることになります。

メールに添付してコンテンツを送るという手間もなくなり、編集ツールと連携することで、カタログへ差し込まれた画像の元ファイルを追跡したり、肖像権や著作権といったライツ管理も容易にできるようになります。適切かつ有効な活用が実現するでしょう。

AIとの連携でデジタルアセットの管理がより効率的に

今、様々な分野で「AI」の活用が進んでいます。DAMにおいてもAI連携が進んでいます。

AI連携することでどんなメリットが得られるのでしょうか?

例えば画像や映像などのコンテンツ検索に利用する「タグ付け」がその一つです。

これまでは画像や映像を検索・分類をしやすくするために、人手で複数のタグをつけていました。しかし、大量のデジタルアセットにタグ付けするには、大きな労力が必要です。また経験も必要でしょう。

しかし、画像認識AIを活用すれば、過去に人がつけたタグを解析・学習し、人以上の精度で、自動でタグを付与してくれるようになります。つまりタグ付け作業が効率化されるということです。

 

画像認識AIによる自動タグ付けイメージ

図. 画像認識AIによる自動タグ付けイメージ

 

また、音声のテキスト化や画面上に表記されたテキストのOCR化により、音声データや映像データの中の「特定のテキスト」を容易に見つけることもできるようにもなります。

AIとの連携によるメリットはそれだけには留まりません。著作権管理の効率化にもAIの活用が進められるでしょう。例えば有名人の写真など、肖像権や著作権を適切に管理する必要のあるアセットを素早く見つけることはもちろん、コンテンツの著作権に使用期限のあるものを自動でチェックし、さらに期限が近づいたり、使用期限が切れているものがあれば、アラートを上げてお知らせするということも可能になります。

そのほかにも配信するデバイスに合わせて、自動で画像をトリミングすることも可能になるなど、AIとの連携でより効率的なデジタルアセットの管理、活用が実現するのです。

まとめ

年々、社内に増え続けるデジタルアセット。万一、不正に活用されてしまえばコンプライアンス問題に発展、SNSで拡散されてしまうと、信用も失墜、ビジネスにも大打撃を与えてしまうことになります。

デジタルアセットを適切かつ効率的に管理するには、DAMの導入が欠かせませんAI連携などの近年の技術革新により、ますます高機能化が図られているため、導入によるクリエイティブ業務の効率化、生産性の向上が期待できます。

欧米ではすでに、毎回千人以上の来場者を集めるDAMイベントが各地で開催されるなど、そのソリューションの価値が広く浸透しています。日本でも、ますますその重要性に注目が集まっています。