デジタルトランスフォーメーションやグローバル化の促進によりデータは日々爆発的に増えています。
全世界の総データ量は2年ごとにほぼ倍増しているともいわれています。
そのような中、さらなる「業務効率の改善」、GDPRをはじめとする法規制対応などの「コンプライアンスやリスク管理」の徹底、社内データのさらなる有効活用による「売上の拡大」は、昨今の経営課題としてよく聞こえてくるでしょう。
しかし、データの爆発的な増加に伴い、なかなかこれらの経営課題が改善されない企業が多いのではないでしょうか。現場目線では一体どのような「情報管理の課題」があるのか?その課題をクリアするためにはどうすれば良いのか?
本記事では、情報ガバナンス視点における情報管理の現場の課題を挙げ、その解決策について考察します。
情報ガバナンスの視点における情報管理の現場の課題
デジタル化やグローバル化は加速する一方です。こうしている間も貴社の社内データは爆発的に増え続けていることでしょう。これらのデータをいかに迅速に把握し、活用することが競争を勝ち抜く上で重要だということに気づいている経営層は少なくないといえます。
働き方改革に伴う業務効率の改善、法規制や社内不正防止のためのコンプライアンスやリスク管理、社内ビックデータの有効活用による売上の拡大など経営課題が何なのか、なんとなくは分かっていたとしても、どこから手を付ければいいのか、どのように進めていけばいいのか、現場ではそこで思考停止しているケースが多いのが現状ではないでしょうか。
現場でよく見られる情報管理の課題について、それぞれの経営課題の視点で見てみましょう。
まずは、「業務効率の改善」。社内でこんなことは起きていないでしょうか?
提案書や契約書、見積書、人事関係や経理関係の関連書類など日々増え続ける膨大なデータの中から「探している文書が一体どこにあるか分からない」、データをコピーしたり複数の人が編集しているため、「どれが最新のデータか分からない」、「だれが編集したのかもわからない」などなど。
また、業務効率化以前に、そもそも社内の業務プロセス自体の標準化ができておらず、可視化もできていない。
図)組織や場所で分断される情報コンテンツの課題
営業部、人事部、経理部、どの部署も仕事のための仕事で日々「オーバーワーク」に陥っていないでしょうか?
「コンプライアンスやリスク管理」の視点ではどうでしょうか。
例えば、最近ニュースでよく聞くGDPR(General Data Protection Regulation)などの法規制対応を検討したいが、そもそもGDPRとは何か? GDPRが適応されるのはどんなケースなのか?日本国内の企業やうちには無関係なのでは?現場レベルでは、日々様々な疑問が生じていることでしょう。
個人情報・機密情報の情報漏えいや社内不正によるデータ改ざんなど、いつ起きるか分からない事故を未然に防ぐ方法や、有事の際に素早く対処できるよう平時から備えておく必要があります。
なぜなら、不祥事を起こした場合の、社会的信用の損失や株価への影響など、会社経営そのものに悪影響を与えるからです。
「売上拡大」の視点ではどうでしょうか。
BIやアナリティクスソリューションの活用で、ERPなどに格納されている「構造化データ」の有効活用はできているものの、社内のサーバーやクラウドサービス上に散在している文書やコンテンツなどの「非構造化データ」を含めた有効活用は全くできていないケースはよくありがちです。
※構造化データと非構造化データについての詳細は、「構造化データと非構造化データとは?データ活用に必要なビッグデータ管理の課題」の記事も参照ください。
昨今の大きな経営課題のひとつとして、「構造化データ」と「非構造化データ」を合わせた「ビッグデータ」をいかに有効活用して売上の拡大を図るかということが挙げられます。社内に散在する文書やコンテンツなどの非構造化データの割合は実に8割ともいわれ、活用したいが、その方法論が分らないというのが本音ではないでしょうか?
図)構造化データと非構造化データの特徴と8割2割の法則
現場の課題を解決するECMとは?
前述した情報管理の現場の課題を解決する良いソリューションはないものでしょうか?
繰り返しになりますが、企業が保有するデータ量が増加の一途を辿り、そのうちデータベースに格納、管理されている構造化データは2割に過ぎず、データベースに格納されず活用されないままになっている、ビジネス文書、画像データ、動画データ、音声データ、電子メールといった非構造化データは8割にも上ります。
このような8割にも上る「非構造化データ」を、業務で活用している「構造化データ」と合わせてセキュアに管理・活用できるのが、ECM(Enterprise Content Management)なのです。
ECMとは、企業が保有する全てのファイルや文書などのコンテンツを統合的に管理することを意味します。部門間でバラバラに管理されているコンテンツや文書をセキュアに効率的に管理し、業務プロセスに応じた業務テンプレート作成や承認フローなどのワークフローの組み込みもでき、かつ既存の業務システムとの連携もスムーズに行うことができます。
また、それらのデータをセキュアに管理するだけではなく、どこのシステムからでも、どこにいても簡単に見つけることができるなど、ファイルや文書の情報管理が飛躍的に向上するでしょう。
図)企業内コンテンツの「利用」と「管理」の両方を実現するECMの役割
前述した現場の課題をクリアできるのか?個別に見てみましょう。
「業務効率の改善」
ECMは既存の業務プロセスと密接なファイル管理や文書管理ができ、かつ全文検索や絞り込み検索など効率的なコンテンツの検索が可能です。
今まで膨大なデータの中から探していた無駄な作業や、どれが最新のファイルなのか分からないといった現場の課題がクリアされます。つまり、必要なファイルへのアクセスが格段に向上することで日々の無駄な作業から解放され、業務コストの削減が期待できるでしょう。
「コンプライアンスやリスク管理」
ECMは保管しているファイルやフォルダ単位、ファイルの文章内でさえも、高度なアクセス権や閲覧権限を設定することができるため、個人情報や機密情報の情報漏えいを未然に防ぐことができます。また、監査ログで詳細な操作履歴も残せるので、誰がいつどのような情報を見たか、変更や削除をしたかを簡単に追跡できるなど、データ改ざん防止などのセキュリティ面も格段に向上します。もちろん、企業監査時の迅速な情報開示にも有効となるでしょう。
「売上の拡大」
「構造化データ」のみならずビジネス文書、画像データ、動画データ、音声データ、電子メールといった「非構造化データ」も全て既存の業務と関連して素早く取得し、活用することができます。
つまり、各部署やグローバルを含めた各拠点が保有する情報管理やコントロールがこれまでよりも容易となるため、社内のビッグデータを有効活用したさらなる売上の拡大に貢献するでしょう。
例えば、蓄積された顧客データを素早く処理し、商品開発や販売計画を立案することができるようになる、新店舗をオープンさせるときにオープン予定の立地と類似した既存店舗のデータを参考に売上や客層を予測するなどがあげられます。ビッグデータの素早い有効活用は、競合他社と戦ううえで貴重な武器となりえるでしょう。
図)部門間での情報・知識共有を促進するECMの役割
まとめ
経営課題と乖離して、現場では、それ以前に様々な日々の「情報管理の課題」を抱えているケースは少なくありません。
一方で、社内を見渡せば、日々データが爆発的に増え続けており、業務の非効率化やコンプライアンスリスクがますます高くなってきているのも事実です。
今後は、構造化データと非構造化データを含めたビッグデータの一元管理にも重点を置き、ECMなどのソリューションの活用で現場の課題を解決することも一つのキーとなるでしょう。