情報ガバナンスにはビジネスを変える力があります。情報ガバナンスは、情報の価値を最大限引き出し、ビジネスに役立てることができるからです。
しかし、ビジネスを大きく変えるプログラムの例に漏れず、情報ガバナンスの場合も、実施にはさまざまな困難が伴います。
目次
- 1 情報ガバナンスを進める上でよく陥りがちな13の落とし穴
- 1.1 情報ガバナンスで重要なのは第1に人、第2にプロセスであり、テクノロジーはその次であるという順番を取り違えている
- 1.2 記録管理と情報ガバナンスが同じものだと思っている
- 1.3 役員レベルが積極的に関与していない
- 1.4 運営委員会に適切なメンバーが参加していない
- 1.5 テクノロジーがすべてを解決すると思っている
- 1.6 従業員の負担が大きすぎる
- 1.7 プログラムの自由度が高すぎる
- 1.8 社内に焦点をあてすぎている
- 1.9 全部を一度に進めようとしている
- 1.10 プログラムを立ちあげた後、見直しをしていない
- 1.11 適切な研修を行っていない
- 1.12 プログラムを完璧なものにしようとしている
- 1.13 予算や想定されている効果が非現実的なものである
- 2 まとめ
情報ガバナンスを進める上でよく陥りがちな13の落とし穴
情報ガバナンスで重要なのは第1に人、第2にプロセスであり、テクノロジーはその次であるという順番を取り違えている
情報ガバナンスというとまずITプロジェクトだと考える企業が多いのですが、実はそうではありません。
もちろんITも重要な要素ではありますが、情報ガバナンスで何よりも大切なのは、「ビジネスの変革」です。変革プログラムの例に漏れず、情報ガバナンスの場合も、いかにプログラムの内容を理解し、組織文化に組み込み、適合させることができるかが成功の鍵となります。
記録管理と情報ガバナンスが同じものだと思っている
記録管理は情報ガバナンスに欠かせない要素ではありますが、情報ガバナンスとイコールではありません。
情報ガバナンスは、単に文書を作成、保存、アーカイブ、廃棄、管理するにとどまらない幅広い取り組みです。記録管理の場合は通常、非構造的情報だけが対象となり、電子メールやソーシャルメディア上の情報は十分にカバーされません。
一方、情報ガバナンスでは、会社の情報からどのようにビジネス上の価値を引き出せるか、また、情報をどのような場合に、どのような方法で共有・利用するかが焦点となります。
役員レベルが積極的に関与していない
会社を大きく変えるプログラムには、一つ必ず言えることがあります。
トップに立つ人がプログラムを主導していない場合、プログラムが成功する確率は非常に低くなるということです。取締役や経営幹部レベルが積極的に関与することで、プログラムによる変更が組織全体に迅速に浸透しやすくなります。
運営委員会に適切なメンバーが参加していない
多くの企業では、プログラムの計画、実施、管理にあたる組織として、情報ガバナンス委員会という運営委員会が設置されます。
最初は法務部やコンプライアンス、IT部門などからメンバーが選ばれることが多いのですが、プログラムの戦略的ゴールを達成するためには、社内全体からバランスよくメンバーを選ぶことも必要です。プログラムの影響を直接受ける従業員や、社内の各種情報に関してビジネス上の価値を正確に把握している従業員などを委員会に参加させることをお勧めします。
テクノロジーがすべてを解決すると思っている
最新のツールやソフトウェアを購入するだけでは、社内の情報問題は解決できません。こうしたツールは、情報ガバナンスというパズルの最後のピースに過ぎないからです。もちろん市場には、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)をはじめとする効果的なソリューションがたくさんあります。
しかし、まず始めに、会社の情報にどのようなビジネス上の価値があるかを明確に把握し、こうした情報を最大限有効に活用するための戦略や手順が整備されていなければ、どのようなITソリューションが良いのか選ぶことも難しくなります。
テクノロジーは効果的なポリシーや手順をサポートするものであり、これに代わるものではありません。
従業員の負担が大きすぎる
情報ガバナンスを行う場合は、従業員による情報の利用方法や取扱い方法もある程度変わらざるを得ません。新たなアプローチが、現行の業務とかけはなれていれば、それだけ変更への抵抗感が強くなる可能性があります。
このため、情報ガバナンスプログラムを行う場合は、最初の時点で時間をかけて情報の利用パターンを把握し、従業員に受け入れられる情報の取扱い手順を策定することをお勧めします。
例えば、情報の分類・タグ付け作業が自動的に行われるようにして、文書作成者の負担を減らすといったことも考えられます。ただし、この場合は、必ず次に記載する落とし穴にもご注意ください。
プログラムの自由度が高すぎる
ビジネスユーザーにとって自然な形で情報を提供したいという考えには、注意が必要です。なぜなら、それを意識し過ぎて、知らないうちにプログラムの当初の目的が薄れてしまう場合があるためです。
情報ガバナンスでは、常に企業がすべての情報をコントロールできるようにしなければなりません。このため、情報も管理の権限も、ある程度集約化することが必要です。
社内に焦点をあてすぎている
昨今のビジネスにおいては、取引先と緊密に連携する企業同士のネットワークが作られています。こうした企業のあらゆる部門との情報交換も、情報ガバナンスプログラムに従って管理しなければなりません。
特に、クラウドベースサービスを提供する業者に業務を委託する場合は注意が必要です。
全部を一度に進めようとしている
多くの企業では、情報ガバナンスプログラムを始める時に、過去のデータすべてに手を付けようとします。しかし、これは、長い歴史を持つ企業にとっては大変な作業です。また、膨大な時間と労力をつぎ込んでも、企業にとってはほぼ付加価値を生まないので、高い確率で挫折することになります。
このようなことをするよりも、まずゴールを定め、そこからさかのぼって作業を行う方が何倍も効果的です。
情報ガバナンスに関するしっかりとした土台があるのであれば、すぐに結果が出る小さなプロジェクトから始めるというのも方法です。ある企業では、取り組みによるメリットが関係者全員にすぐに分かるように、一つの事業部門の電子メールシステムから始め、うまくいったという例もあります。
とはいえ、なるべく現実的なスケジュールや締め切りを設定するようにしてください。一般的に、情報ガバナンスプログラムが本格的に稼働するためには3年から5年がかかります。
プログラムを立ちあげた後、見直しをしていない
ビジネスは常に変化するため、情報ガバナンスにも変化が必要です。規制は頻繁に改正されますし、ビジネスのゴールも頻繁に変わります。
こうした状況に対応できるよう、情報ガバナンスプログラムも、柔軟なものにし、継続的に見直して改善する必要があります。
少なくとも四半期に1度の頻度で定期的に情報ガバナンス委員会を開き、明確なアクションプランの策定や、プログラムのパフォーマンス測定を行うことをお勧めします。
適切な研修を行っていない
情報ガバナンスプログラムでは、なぜプログラムが導入され、業務にどのような価値をもたらすのかをビジネスユーザーが明確に理解していることが必要です。
また、新しいシステムを導入するのであれば、ビジネスユーザーが使い方を知らなければなりません。役員などのマネジメント層に対する研修も必要です。マネジメント層は、情報ガバナンスプログラムの投資利益率(ROI)も知りたいでしょうし、担当する事業部門の活動に、情報ガバナンスがどのよう効果をもたらすのかも知っておく必要があります。
例えば、法務責任者や顧問弁護士も、研修を受け、あらゆる商取引や取引関係に情報ガバナンスの問題が生じる可能性があること理解する必要があります。
プログラムを完璧なものにしようとしている
人生でも、情報ガバナンスでも、ハードルが高すぎれば挫折しやすいのは同じです。
プログラムを始める前にビジネスリーダーと話し合い、企業が目指すべき現実的な情報ガバナンスのゴールを設定するようにしましょう。完璧なシステムを実施しなくても、現状からは大きな進歩があるはずです。
予算や想定されている効果が非現実的なものである
どのような業務でも憶測で行動するのは危険ですが、特に情報ガバナンスにおいては致命的です。
情報ガバナンスの効果として非現実的な効果が期待されていた場合、その効果が現れなかったときにプログラムの勢いが弱まってしまうのは避けられません。また、非現実的な予算を組んでいると、投資効果が現れないうちに予算を使い切ってしまうことにもなりかねません。
適切な情報ガバナンスプログラムを進めるために企業では何が必要か、また、情報ガバナンスプログラムによって、いつ頃、どのような効果が現れるのかについて、きちんと時間をとって現実的な予測を立てるようにしましょう。
まとめ
いかがでしょうか。社内で情報ガバナンスを進める場合、さまざまな困難が想定されます。このような「落とし穴」を十分に理解して情報ガバナンスの推進を効率的に進めることで、情報の価値を最大限に引き出し、ビジネスに役立てることができるのです。