企業の不祥事に関する報道が後を絶たない昨今、社内の不正なデータ改ざんや情報漏えいは社会的に大きな影響を与えています。こういった、不正を予防するためにも、社内の紙媒体や電子データの保存やエビデンス(証憑)の厳密な管理は重要な経営課題であるでしょう。

日本では、デジタルデータの保存やエビデンス管理について「e-文書法」「電子帳簿保存法」「スキャナ保存」で明確に「要件」が定められています。

本記事では、これらの要件を押さえるとともに、社内コンプライアンス向上のためのe-文書法や電子帳簿保存法におけるエビデンス管理のポイントについて解説します。

e-文書法」と「電子帳簿保存法」「スキャナ保存」とは?


2005
年に施工された「e-文書法」とは、多くの法律によって紙媒体で原本の保存が義務付けられていた文書や帳票を、電子データとして保存することを容認する法律です。e-文書法は「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律で構成されています。

一方、e-文書法よりも前の1998年に制定されていた「電子帳簿保存法」とは、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存することが認められた法律で、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」のことを指します。制定当初は、「コンピューターにより作成された帳簿」のみをデータ保存の対象としていましたが、2005年に制定されたe-文書法と併せて、同年に改正され、国税関係書類(領収書、請求書、納品書等)の「スキャナ保存」が可能となりました。

改正当初は、金額の制限や電子署名・タイムスタンプの付与など厳しい規制が原因でなかなか浸透しませんでしたが、2015年以降に電子帳簿保存法が改正されたことで、スキャナ保存への規制が大幅に緩和され、データ管理が幾分か簡略化されて電子化が可能になった国税関係書類が増えました。

e-文書法や電子帳簿保存法の制定により「業務の効率化」が推進される一方、「電子データの保存方法やエビデンスの管理方法」は、e-文書法と電子帳簿保存法のそれぞれ「異なる要件」が存在し、情報ガバナンスやコンプライアンス対応の観点からは注意が必要です。

e-文書法」と「電子帳簿保存法」「スキャナ保存」の要件について


 
e-文書法の要件は4つあります。「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」4つがe-文書法の要件です。

「見読性」とは、データ保存したものをパソコンなどで明確に情報が見える状態であることをいいます。
「完全性」は、保存したデータの改ざんや削除などに対して対策がとられており、その事実を確認できることが求められます。
「機密性」は不正アクセス防止のため、許可の無い者がアクセスできないように措置を講じなければならないということを指します。
そして「検索性」とは、有効的に利用できるように欲しいデータをすぐに引き出せるような検索性を確保する必要があることをいいます。

e-文書法の場合、これら4つの要件をすべて満たす必要はなく、書類の重要度によって必要な要件が変わります


一方、電子帳簿保存法では、大きく分けると2つの要件があります。「真実性の確保」「可視性の確保」2つが電子帳簿保存法の要件です。

ただ、この二つの要件は、さらに細かく分かれます。「真実性の確保」には「訂正・削除履歴の確保」「相互関連性の確保」「関係書類等の備付け」3つの要件があり、「可視性の確保」には「見読可能性の確保」「検索機能の確保」2つの要件があります。

これらの要件は、「国税関係書類の情報を電子データで保存する場合」「紙媒体の書類をスキャンして電子データとして保存する場合」で内容が変わっていきます。

では、国税関係書類の情報を電子データで保存する場合についてはどうでしょうか。

まず、「訂正・削除履歴の確保」ですが、改ざんや削除の対策がなされており、データを訂正・追加・削除など何らかの手を加えた場合、タイムスタンプなどによっていつ行われたのかが履歴で事実確認できることが盛り込まれています。

「相互関連性の確保」においては、電子的に保存した内容と他の帳簿との内容に関連性がある場合に、関連性があることがわかるようにしておく必要があります。

「関係書類等の備付け」では、システム概要書や事務処理マニュアルなどのシステム関係書類を備え付ける必要があり、社内において書類が承認されるまでの流れ(ワークフロー)や規定を構築し、それに基づいて社員による事務処理が実行される必要があります。

「見読可能性の確保」と「検索機能の確保」については、e-文書法の「見読性」と「検索性」と同様の内容で、パソコンなどで明確に情報が見える状態にあること、欲しいデータをすぐに引き出せるような検索性を確保することが必要になります。

一方、紙媒体の書類をスキャンして電子データとして保存する場合(スキャナ保存)についてはどうでしょうか。
電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件は、書類をスキャンする過程が含まれるため、その過程に対しての要件がさらに細かく決められています

例えば、書類を受領してからスキャンするまでの「期限」が設けられており、書類に関連する情報の入力を「速やかに」しなければならない重要書類の場合では1週間以内、入力を「特に速やかに」しなければならない場合は3日以内とされています。

また、画像の解像度や諧調が定められている場合もあり、保存される画像の大きさについても明確にしなければならない場合もあります。加えて、1つの画像に対して1つのタイムスタンプを改ざん防止のために付与する必要があります。

電子帳簿保存法のスキャナ保存でも相互関連性の確保や検索機能の確保などが必要なのは同様なのですが、特徴的なのは情報の管理についてです。

スキャナ保存した電子データを訂正・削除した際、その履歴と事実が確認できるようにすることに加えて、編集した者の名前と監督した者を確認できるようにする「入力者の情報」が必要です。こういった、スキャン保存を行う際に不適切な処理が行われないような「内部統制」の確立を目的とした要件である「適正事務処理要件」があります。

 

このように、e-文書法や電子帳簿保存法、スキャナ保存には厳格な要件が数多く存在しますが、文書(ファイル)管理やコンテンツ管理などのITソリューションの導入で的確に要件を満たすことが可能ですし、さらなるメリットとして、確実な「デジタルエビデンスの管理基盤」を得ることにより、社内の情報ガバナンスを推進できると共に、不正防止などのコンプライアンスの向上にもつながっていきます。

まとめ


いかがでしょうか。今回は、情報ガバナンスを社内で進める上で、押さえておくべき日本国内の法規制であるe-文書法や電子帳簿保存法、スキャナ保存の要件について解説しました。

特にスキャナ保存の要件は厳しく、社内の一人一人への周知にも時間がかかってしまいます。もし、電子データにおける的確なデジタルエビデンスの管理を考えているのであれば、スキャナなどの機器やITソリューションを揃えるだけではなく、社内全員が周知できるような導入コンサルティングがしっかりと含まれているサービスの利用もおすすめします。