組織が置かれている状況はそれぞれ異なり、ビジネス上の課題や目標も違います。そのため、情報ガバナンスのプログラムも違った内容になり、情報管理の要件は、各組織のニーズに応じて定める必要があります。
とは言え、お客様の組織にも、どの情報ガバナンスプログラムにも共通する領域があるはずです。必要なことは、お客様の組織が持っている情報を把握し、要となるすべての領域で、「ベストプラクティス」を反映させたポリシーを策定することです。
本記事では、情報ガバナンスプログラムの計画立案に役立つベストプラクティスとアドバイスをご紹介します。
目次
情報ガバナンスの計画立案に共通する9つのベストプラクティス
経営幹部の関与が必要
情報ガバナンスとは、組織内の情報を、その情報の所有者が管理するための仕組み、ポリシー、戦略、主要な手順を定めたものです。ガバナンスプログラムを適切に運用するには、適切な人員の関与が不可欠で、役員レベルの人員が推進する必要があります。
CIO や、CFO、CTO、相談役が権限を持って推進し、ポリシーと手順を実行に移していくのです。
部門横断型の諮問委員会の設置
情報ガバナンスプログラムは、社内の隅々まで幅広く大きい影響を与えるため、役員とマネージャー (幹部) によるサポートが必要です。そこで、部門横断型の委員会 (諮問委員会などと呼ばれる) を設置し、プログラムの計画立案と運用を牽引する必要があります。
情報ガバナンスに取り組む際のベストプラクティスは、扱いやすい小規模プロジェクトを複数実施し、その中でプログラムを展開していくことです。その展開に応じて、実施中のプロジェクトに直接的に関連する部署のマネージャーが参加するようになり、委員会の顔ぶれが充実していきます。
初期段階からの IT 部門と業務ユーザーの関与
通常、情報ガバナンスを推進するのは法務部ですが、そのほかにも関与すべきグループが 2 つあります。
まずは IT 部門です。ニーズに合ったテクノロジーソリューションを採用し、情報ガバナンスプロジェクトのライフサイクルと IT システムのライフサイクルをマッチさせるためには、IT 部門の関与が欠かせません。
次に業務ユーザーです。これは、社内を行き交う情報の価値を判断する適任者は、実際に情報を利用しているユーザーだからです。業務ユーザーなら、自分がどの情報にアクセスする必要があるのか、どのような方法でアクセスしたいのか、またどのような情報が業務に不要なのかを判断することができます。
長期的な展望を持つ
情報ガバナンスプログラムの実施には、一般的に 3 ~ 5 年かかると言われています。それよりも期間が短いと、プログラムのメリットを十分に引き出すことができません。
またその反面、長時間かけても目に見える成果を達成できない場合は、プログラムは行き詰まり、失敗に終わる可能性が高くなります。
小さく始めて、大きく考える
多くの組織は、情報ガバナンスプログラムをレガシー情報の再構築から始めようとしますが、多くの場合、これは莫大な労力を要します。
それより効率的なのは、組織が目指す環境の土台を構築することに重点を置くアプローチです。土台が構築されれば、小さなプロジェクトを開始し、情報ガバナンスの全面的な実施に向けて動き始めることができます。
たとえば、電子メールに含まれる情報に焦点を当てるアプローチでは、高いコスト効果でメリットを実現できます。このようにして、新しいプロジェクトを一つひとつ実施していくことで、今ある環境を整備していくことができます。
一元的で柔軟性のあるポリシーの作成と管理
情報ガバナンスのポリシーは、一元的に作成および管理する必要があります。ポリシーの発信源を一元化し、そこでポリシーの解釈、文書化、保護を行うようにします。
これにより、一元化されたポリシーの管理下にある情報源を 1 度検索すれば、目的の情報を入手できる環境が生まれます。このアプローチを採用することで、社内情報が記録されている複数のシステムを個別に調べる必要がなくなるため、かかるコストと時間を大幅に削減できます。
これが、組織の情報構造をシンプルにするための出発点となり、同じ情報や文書には 1 つのバージョンしか存在しない絶対的な状態が実現します。
「アクティブコンプライアンス」の採用
情報ガバナンスの大きな利点の 1 つは、効果的なコンプライアンス (法規制遵守) です。同時にコンプライアンスは、企業にとってコスト要因として認識される場合もありますが、「アクティブコンプライアンス」を採用することにより、競争力の向上に役立てることも可能です。
アクティブコンプライアンスを推進することで、自然と、業界で確立しているベストプラクティスや手順にそって業務を行うことになり、リスクも最小限に抑えられることになります。同じ業界の企業はすべて、同じ規制を遵守する必要があるため、規制の枠組みにしっかりと収まる、より優れた製品やサービスを提供することで、利益を得ることができます。
あらゆる事業プログラムや事業プロジェクトへの情報ガバナンスの導入
情報ガバナンスは独立した事業プログラムと認識される場合もありますが、これは、価値観や行動様式としてとらえるべきです。情報ガバナンスを組織内で一貫して運用する近道は、どの事業プログラムや事業プロジェクトでも、最初から情報ガバナンスの要素を組み込むことです。
これにより、情報ガバナンスは次第に、独立した事業活動ではなく、ごく自然な業務の一部として考えられるようになります。
アメとムチが必要
情報ガバナンスを順守すべく社員を動機付けることは簡単ではありませんが、クリエイティブな発想で、日々の業務に役立つことを理解してもらう機会を設けることができます。
たとえば、情報ガバナンスプログラムによって大量の不要な情報がなくなり、必要な情報を簡単に入手できようになることを説明する、などの方法が考えられます。
このアプローチを採用するには、情報ガバナンスに関する本格的なトレーニングと、それを支える IT システムが必要になります。
さらに加えて、コンプライアンス違反に対しては、強制力と正当性のある罰則を定め、それを社員に周知徹底する必要があります。
ご存知でしたか?
- ほとんどの組織では、全体の実に 69% もの情報が、ビジネス上も、法的にも、規制対応においても価値のないものです。
- 最近実施された調査で、自社のデータガバナンスの成熟度を「高い」や「非常に高い」と評価した組織はわずか 15% でした。
- 最近実施された別の調査では、情報ガバナンスに関する研修を定期的に行っていると回答した組織は全体のわずか 16%、研修をまったく行っていないと回答した組織が 31% にも上ります。