eDiscovery(電子情報開示)とは、電子的に保管された情報(ESI : Electronically Stored Information)を特定、保管、収集、分析、レビュー、提出するプロセスのことです。

構造化データ非構造化データの分析がeDiscoveryの核となります。通常、日常業務においてさえ、関連性や権限の分析の対象となる何百ギガバイトもの膨大な電子データが扱われます。

 

 

法律遵守と規制遵守の対策から着手されることが最も多く、内部調査、デューデリジェンス、金融契約の分析、プライバシーへの影響評価(GDPRなど)、情報漏洩への対応を目的として、eDiscoveryプロセスとそれを支えるデータマイニングテクノロジーが配備されることもあります。

現代社会において企業が成功し続けるには、eDiscoveryへの取り組みが不可欠なのは明らかです。


効果的なeDiscoveryのためには、「データベースなどの構造化データ」「Eメールや画像・文書などの非構造化データ」の両方を含め、企業全体が持つ情報をくまなく調査し、コンテンツを効率的に分析できなければなりません。


最良のeDiscoveryソフトウェアは、既存のシステムと訴訟準備ポリシーを一体化することはもちろん、目標を定めた電子データの収集、洗練された選択方法、重複の除外にも対応します。さらに、AIにより強化された分析機能、全面レビューとタグ付け、自動編集、DIYによる提出機能なども備わっています。

 

従来は、eDiscoveryの複雑さゆえに、アウトソーシングが好まれていました。例えば、企業一社で、eDiscoveryポートフォリオを取り扱う法律事務所や法的サービス提供業者(LSP)を多数抱えることも珍しくはありませんでした。

実際に、さまざまに異なるeDiscoveryワークフローを取り扱う多数のベンダーを管理するために、コンサルティング業界がまるごと1つ生まれたほどです。

 

eDiscoveryソフトウェアと法的サポートソフトウェアの進歩のおかげで、プロセスが簡素化されてきています。企業の法務部門の半数近くが、発見データのホスティングと管理のために統合化された集中管理的アプローチを採用しています。

社内にeDiscoveryシステムを組み込むことで、企業の法務部門がeDiscoveryプロセスを迅速、正確、効率的に処理することが可能になり、eDiscoveryプロセス初期の「収集」段階に大きな影響を与えました。


eDiscoveryコストの70%がレビューにかかることを考えると、前もって目標を定めて収集することは、全体のコスト削減に非常に大きく影響します。

ある事例では、企業クライアントがeDiscoveryテクノロジーとプロセスを社内に導入したところ、レビューのために外部の弁護士に出すデータの量が95%以上も削減されました。 

eDiscoveryプロセスの概要


通常eDiscoveryは、訴訟が妥当と見なされたときから、判決後の上告まで関わります。プロセスを単純化すると以下のようになります。

  • 弁護士により潜在的な関連データが特定され、訴訟ホールドに置かれるか、法的保護が可能な方法で収集される。
  • 安全に破棄してよいと法的に提言されるまで、データは保管される。

 

最良のeDiscoveryソリューションには、自動的な分類、パターン認識、傾向判断を可能にする高度な分析機能が備わっています。

AIやマシンラーニングもまた、最新のeDiscoveryソフトウェアには非常に重要な機能です。

例えば、プレディクティブ・コーディング技術は、管理された継続的なマシンラーニングを利用して、人間による関連性の判断から学習し、過去の例をもとにドキュメントの関連性に優先順位付けできるデータモデルを構築します。

eDiscoveryソフトウェアを使用するメリット


適切なeDiscoveryソリューションを利用することで、組織の規模や優先事項に応じて、eDiscoveryの全体またはその一部を社内で効率的に取り扱えるようになります。

検索、特定、収集、選択、処理のためのEarly Case Assessment(訴訟案件の早期評価査定: ECA)アプリケーションが導入されるのが一般的です。

レポート作成も新たな急成長トレンドであり、企業の法務部門はより重要なプロセス指標の収集とレポート作成に着手し始めています。現代的な企業のほとんどは、何らかのeDiscoveryソフトウェアを社内に導入し、その一方で、ドキュメントのレビューを法律事務所や法的サービス提供業者に頼る形を取っています。

よくあるケースでは、実際の訴訟やコンプライアンス計画そのものを監督する法律事務所の管理の下で、レビュー担当の法的サービス提供業者と共に、社内で収集、処理、選択作業を行うというものです。

 

しかし、eDiscoveryテクノロジーとワークフローの進歩により、eDiscoveryプロセス全体を社内に組み込む企業がますます増えることになり、次のような重要なメリットが得られるようになります。

 

1.コスト削減

eDiscoveryツールのデータマイニングやデータ分析の機能により、目標を定めた収集と優先順位付けしたレビューが可能になり、全体的なコストが削減されます。

2.予算が予測可能

トランザクションベースのサードパーティーのプロジェクト契約と比べて、テクノロジー関連費用と社内の人件費の予測が立てやすくなります。

3.従業員を支援

従業員がタスクを遂行するのに必要な機能をeDiscoveryツールが提供するため、サードパーティーに依存する必要がなくなります。

4.訴訟準備

特に高度な訴訟が起きやすいセクターでは、社内のeDiscoveryによって、企業は迅速に対応するための準備を整えることができ、処理の実施が一段とスムーズになります。

5.迅速で正確なレビュー

AI、予測分析、マシンラーニングを備えたeDiscoveryソリューションは、人力でレビューするよりも素早く、正確に関連情報を発見します。

6.コンプライアンス要件に合致

最良のeDiscoveryソフトウェアには、特定のセクターでのコンプライアンス要件を満たすSLAが付いてくるはずです。

eDiscoveryソリューションの特徴


最良のeDiscoveryソフトウェア
には、重要な機能が多数備わっています。

既存システムとの統合

企業向けに、eDiscoveryソリューションを既存のコンテンツ管理システムとつなげることで、eDiscoveryが情報源とシームレスに結合し、機密情報に関わるデータを取り扱う際のリスクを最小限に抑えることができます。

高度な分析機能を搭載

キーワード検索やドキュメント属性(MIMEタイプ、修正データ、新規作成データ、所有者など)でのフィルター機能は、eDiscoveryの基本的なツールです。これらの機能は強力で柔軟性があり直感的に使用できます。

データ視覚化機能を搭載

何千ものメールがどのように関連しているかを読み解くのは、インタラクティブなコミュニケーションマップがなければ非常に困難な作業です。

最良のeDiscoveryソリューションは、送信者/受信者のパターンをマッピングし、さらに時系列のアクティビティなどのその他の主要なメタデータ属性を視覚化します。

プレディクティブ・コーディングとマシンラーニング機能を搭載

テクノロジー支援型レビュー(TAR)とも呼ばれるプレディクティブ・コーディングは、AIに法的レビューをさせ、データを広範囲にさっと調べて、それまでの学習をもとに潜在的に関連するESIを提案します。

プレディクティブ・コーディングは、法にかなったレビュー方法として世界中の法廷で広く採用され承認されています。

修正・提出機能を搭載

eDiscoveryには、機密情報や、取り扱いに注意が必要なデータ、個人情報データが含まれることがよくあります。このような情報は、業界標準の出力形式で提出する前に修正する必要があります。

まとめ


いかがでしょうか。本記事では、eDiscoveryのプロセスやソフトウェアを活用するメリット及び特徴について、解説しました。

eDiscoveryは、米国の民事訴訟手続きの中で行われるDiscovery(証拠開示:ディスカバリー)制度の中で必須の制度となります。これは、日本企業やその海外拠点が米国企業に訴えられた場合、社内の何百ギガバイトもの電子データの中から証拠となるデータを開示する必要があり、莫大な対応コストが予想されます。

本記事が、社内でeDiscoveryソリューションの導入を検討する際の参考になればと思います。

最新のeDiscoveryソフトウェアを選ぶ上で確認すべきポイントについては、「2018年において最良のeDiscoveryソフトウェアを選択する方法」の記事を参照ください。