この業界では、「生と死」を扱う分野に対して誰もが期待する通り、国単位および国際的の両方で、広範で厳格な情報ガバナンス要件が設定されています。

新薬の開発には数百万ドルの費用がかかり、FDAの承認を得るまでに何年もの期間を要することがあるため、コンプライアンスは大手製薬会社の成功のカギを握っています。

しかし素晴らしい新薬も、簡単に無価値になってしまう場合があります。世界規模の医薬品サプライチェーンに脆弱性がある場合は、患者が必要とする薬剤を届けられないこともあり得ます。情報ガバナンスは、サプライチェーン全体での情報の流れの制御と管理を支援し、その保全体制を強化します。

問題の規模は計り知れないほどです。世界保健機関 (WHO)は、開発途上国で消費される医薬品の最大25%が偽造品または基準を満たしていない医薬品であると推定しています。
さらに悪いことに、トランスペアレンシー・インターナショナルの推計では、米国などの先進国を含めた全世界の病院の医薬品の3分の2が、汚職と不正行為によって紛失しているとされています。

これは患者の健康を危険にさらすだけでなく、将来的な医薬品開発の躍進的進展を妨げます。製薬会社は医薬品開発に何十億ドルもの資金を投資しているため、66%もの収益を逸失することは致命的です。

問題は、医薬品のサプライチェーンが拡大し、不透明になっていることです。エンドツーエンドの可視性がほとんどなく、サプライチェーン内には攻撃を受けやすい箇所が多数あります。情報ガバナンスを通じて、サプライチェーン全体で情報を管理して共有するためのポリシーとプロセスを設定することにより、この対策に役立てることができます。

 

サプライチェーン上の企業に求められる情報ガバナンスの検討事項は?

医薬品メーカー

医薬品メーカーは、リスクを抑えると同時に、確実に法令を遵守する方法で業務を運用することが要求されます。

組織は、サプライチェーン内の他の関係者、特に現地の政府機関や流通業者と、適切な情報を共有できる環境を構築する必要があります。また、サプライチェーンでの監視活動の多くはモバイルデバイス上で行われるため、デバイス上の情報の取得と管理のためのポリシーを設定する必要もあります。

医薬品の登録

医薬品の登録においては、医薬品の品質管理を保証する上で、現地当局が、透明性があり、効率的で統一された条例と基準を確立する必要があります。

これらの要件は医薬品メーカーに通達される必要があり、新薬に関する情報は適切なシステムに提供される必要があります。市場監視やサンプリング調査を実施し、対象となる製薬会社に最新情報を提供するのは登録機関の責任です。また、登録プロセスのさまざまな要因によって重要情報が孤立化しないよう、ポリシーやプロセスを設定する必要もあります。

調達

医療機関や病院などの調達機関は、入札を文書化すること、および契約発注に関する明示的な基準を設定することにより、透明性のある調達プロセスを確実に実施する必要があります。

入札において得た情報、入札者の契約獲得理由、調達された製品やサービスに関する最新情報を含め、サプライヤー選定に関する情報を確実に管理するには、情報ガバナンスが必要となります。この情報は、メーカーと販売業者が安全に利用でき、医薬品の製造から使用の現場に至るまで、正規医薬品の量をチェック可能にする必要があります。

流通

サプライチェーンの整合性に対する責任の大部分は、流通業者にあります。

流通業者には、最低でも、医薬品が確実に配分、輸送、保管されるようにするための情報システムが求められます。このシステムでは、サプライチェーンのすべてのレベルで情報交換が可能で、在庫と配送を管理できるようになっている必要があります。在庫は、サプライチェーン内を通過する際に電子的に監視され、その情報はメーカーと顧客の両者に提供されなければなりません。

世界規模の大手流通業者では、構造化された情報と構造化されていない情報を膨大な量で取り扱う場合もあれば、配送先住所を変更するたった1通の電子メールで製品の調整が可能になる場合もあります。またこのような情報は、サプライチェーンの整合性に違反する事案が発生した場合に十分に分析できるよう、安全に管理する必要があります。

医薬品の処方と調剤

使用現場における不正を防止するためには、医師の処方パターンを監視する情報システムが必要です。多くの国では、医師の処方方針についてますます多くの規制が設置されているため、これらのシステムで法令遵守を確認できる必要があります。

またシステムでは、必要に応じて自動再注文を容易にする目的において、および処方された薬剤が正規の医薬品だったことを確認するためにサプライチェーンを監査可能にする目的において、メーカーと流通業者の両者と情報交換できる必要があります。


新薬開発に対する規制は不可欠であると同時に、医薬品サプライチェーンの整合性を維持することも同様に重要です。これは、関連する組織間の安全で確実な情報共有をベースとした、サプライチェーンのエンドツーエンドの可視化によってのみ実現します。これを実現するには、情報管理に関して一元化されたポリシーとプロセスを確立するための情報ガバナンスが必要となります。

情報ガバナンスがもたらすメリットは?

合理化

医薬品サプライチェーンに関連する全システムに透明性をもたらす

有効化

サプライチェーン内の違反発生個所をより短時間で特定し、是正措置を可能にする

効率化

世界各地の患者により優れた治療結果をもたらすために不可欠な、サプライチェーンの整合性を実現する