差分バックアップとは、効率的にバックアップを作成するための方法のひとつです。ほかの方法には、フルバックアップや増分バックアップがあります。それぞれバックアップの対象が異なり、必要な容量や復元方法も異なるので、どの方法を選ぶかは、バックアップを取る側にとっては重要なポイントです。しかし、方法を正しく選択するためには、それぞれの特徴をよく理解しなくてはなりません。
本記事では、3つのバックアップ方法の違いや使い分けについて紹介します。
目次
差分バックアップとは
差分バックアップ(Differential Backup)はバックアップの手法のひとつです。毎回、初回のバックアップと現状とを比較し、その差分をバックアップします。
差分バックアップの詳細
バックアップ初回 :A(フルバックアップ)
バックアップ2回目:a1(初回と2回目との差分)
バックアップ3回目:a2(初回と3回目との差分)
バックアップ4回目:a3(初回と4回目との差分)…
a2にはa1の内容が、a3にはa2とa1の内容が含まれます。
毎日バックアップをしていて4日目に復元を行う場合、必要になるのはA+a3です。
差分バックアップでは、バックアップをとるたびに差分の部分が大きくなっていきます。そのため、定期的にフルバックアップを行って差分を小さくしなくてはなりません。
復元するときには、最新のフルバックアップと最新の差分が必要です。
定期的なフルバックアップ
バックアップ初回 :A(フルバックアップ)
バックアップ2回目:a1(初回と2回目との差分)
…
2回目のフルバックアップ:B(初回とこれまでとの差分をすべて含む)
バックアップB+1回目:b1(BとB+1回目との差分)
バックアップB+2回目:b2(BとB+2回目との差分)
2回目のフルバックアップを行うことで、差分を小さくできます。
バックアップB+2回目の時点で復元を行う場合、必要になるのはB+b2です。
なお、バックアップを続けていくと差分ファイルがたまって容量が増えるので、定期的に古い差分ファイルを削除しなければなりません。
ほかのバックアップ方法
ほかのバックアップ方法として、フルバックアップと増分バックアップがあります。
- フルバックアップ(Full Backup)
一度にまるごとすべてをバックアップする、もっとも簡単なバックアップ方法です。
バックアップの時間が一番かかり、多くの容量が必要になります。しかし、バックアップやリストア、復元の作業はもっとも容易です。 なお、フルバックアップは、イメージバックアップやスナップショットとは異なります。
イメージバックアップやスナップショットについては、「スナップショットとは?その仕組みや注意点、具体的な使い方も解説」をご参照ください。 - 増分バックアップ(Incremental Backup)
最初の1回はフルバックアップを行い、2回目以降は毎回「前回のバックアップ時との差分」だけをバックアップする方法です。少し手間がかかりますが、必要な容量はもっとも少なくなります。
差分バックアップ同様、ときどきフルバックアップを行って差分を小さくしなくてはなりません。
復元するときには、最新のフルバックアップと、それ以降のすべての差分が必要です。
増分バックアップの詳細
バックアップ初回 :A(フルバックアップ)
バックアップ2回目:a1(初回と2回目との差分)
バックアップ3回目:a2(2回目と3回目との差分)
バックアップ4回目:a3(3回目と4回目との差分)…
a3には、a2やa1の内容は含まれません。
バックアップ4日目で復元を行う場合、必要になるのはA+a1+a2+a3です。
バックアップからのリストアについては、「リストアの意味を理解しよう!バックアップやリカバリとの違いを解説」をご参照ください。
また、バックアップからの復元については「バックアップと復元とは?その重要性や実施方法などを解説」をご参照ください。
どのバックアップ方法でも、バックアップ先はクラウドバックアップで、バックアップツールを利用するのが主流です。クラウドバックアップなら保存可能な容量が大きく、どこからでもアクセスしやすくなります。
また、バックアップツールを利用すれば、差分バックアップや増分バックアップなどの手間のかかるバックアップ方法でも自動化でき、復元でもミスが起こりにくいからです。
クラウドバックアップについては、「クラウドバックアップで安全なバックアップを用意し、業務停止を防ごう」、バックアップツールについては、「バックアップツールでバックアップ作成を効率化!安定した企業活動には必須」で紹介しておりますのでご参照ください。
災害や障害対策であれば、バックアップからの復旧以外に、レプリケーション、ミラーリング、システム切り替えなどの方法もあります。
障害発生からの復旧については、「RPO(目標復旧時点)とRTO(目標復旧時間)の違いとは」、レプリケーションについては、「レプリケーションとは?メリットやバックアップとの違いを解説」をご参照ください。
また、システムの切り替えについては「フェイルオーバーとは?技術的な仕組みや事例、フェイルバックとの違いについて徹底解説」をご参照ください。
差分バックアップと増分バックアップの違い
差分バックアップと増分バックアップは似ている部分も多いので、使い分けるためには、違いをよく理解しておく必要があります。
差分バックアップと増分バックアップの共通点
差分バックアップと増分バックアップには、次のような共通点があります。
- 初回はフルバックアップが必要
- 一定回数ごとにフルバックアップを行う
復元に必要な差分バックアップを減らし、手間を省きます。 - 何世代かのバージョン管理を行う
バックアップデータにトラブルが起きたときに備えて、安全に復元可能なバックアップを数世代分残しておきます。
差分バックアップと増分バックアップの違い
差分バックアップと増分バックアップには、次のような違いがあります。
- 2回目以降にバックアップするデータが異なる
差分バックアップ:前回のフルバックアップ以降に保存されたデータすべてをバックアップする。前回の差分でバックアップした部分も含む
増分バックアップ:前回の増分バックアップ以降に保存されたデータすべてをバックアップする。前回の増分バックアップでバックアップした部分は含まない - バックアップに必要な容量が異なる
差分バックアップ:前回バックアップした部分も含んだ差分をバックアップするため、容量は大きい
増分バックアップ:前回バックアップした部分は含まないため、容量は小さい - バックアップに必要な時間が異なる
差分バックアップ:バックアップする容量が大きいため、時間がかかる
増分バックアップ:バックアップする容量が小さいため、時間もかからない - 復元の手間が異なる
差分バックアップ:フルバックアップと最新の差分ファイルひとつがあればよい
増分バックアップ:フルバックアップとすべての差分ファイルが必要になる - データ障害の影響
差分バックアップ:差分ファイルのひとつにトラブルがあってもある程度の復元が可能
増分バックアップ:どれかひとつの差分にトラブルがあれば、それ以降は復元できない
まとめると、以下の表のようになります。
差分バックアップ | 増分バックアップ | |
バックアップに必要な容量 | 大きい | 小さい |
バックアップに必要な時間 | 長い | 短い |
復元の手間 | 比較的容易 | 手間がかかる |
データ障害の影響 | 小さい | 大きい |
差分バックアップと増分バックアップの使い分け
上のような共通点と違いを踏まえて、両者をどのように使い分けたらよいのでしょうか。
差分バックアップの特徴と、差分バックアップが向いている場合
差分バックアップには、次のような特徴があります。
- 必要な容量が大きく、バックアップに時間がかかる。その間は回線にも負担がかかる
- 復元が容易
- 差分にトラブルがあっても復元しやすいため、データ障害の発生に強い
- 必要な差分ファイルの数が少なく、世代管理が楽
そのため、差分バックアップは次のような場合に向いています。
- データの更新頻度が低い場合
- データの保存先に、安くて大容量のメディアを利用している場合
増分バックアップの特徴と、増分バックアップが向いている場合
増分バックアップには、次のような特徴があります。
- 必要な容量が少なく、バックアップが速い
- 復元に手間がかかる
- ひとつの差分ファイルにトラブルがあるとそれ以降は復元できないため、データ障害の発生に弱い
- 必要な差分ファイルの数が多く、世代管理が面倒
そのため、増分バックアップは次のような場合に向いています。
- 1日1回以上、こまめにバックアップを行う場合
- 保存先がディスクやクラウドなど、比較的コストがかかる場合
差分バックアップや増分バックアップで効率的なバックアップを
企業が通常の業務を行っていると、日々、多くのデータが作成・保存されていきます。その多くは業務に欠かせない重要なデータであり、一定期間中はしっかり保存しておかなくてはなりません。そのため、定期的なバックアップの作成は企業にとって非常に重要です。
しかし、毎回フルバックアップを行っていては、かかる時間も必要なディスク容量も膨大になってしまいます。ツールを利用して、差分バックアップや増分バックアップのような効率的な方法をとるべきでしょう。
効率的なバックアップを行うためのツールなら、ウェブルートの「Carbonite® Endpoint」があります。リモート環境を含め、すべてのエンドポイントのデータを保護することで、万一データ消失・破損などが起きても早期復旧、事業再開が可能です。業務にMicrosoft 365アプリケーションを利用している場合は、「Carbonite® Backup For Microsoft 365」もご利用ください。Microsoft365アプリケーションのデータを容易かつ効率的にバックアップできます。